2016年12月8日木曜日

【リカバリーカレッジ】講座の紹介

たいへん久方ぶりの更新となってしまいましたが、今回はこれまでと趣向を変えて、「リカバリーカレッジ」にまつわる話題を提供したいと思います。



リカバリーカレッジとは、精神的な困難の経験を持つひとたちが、専門的な知識や技能を持つひとたちと、共につくっていく「学校」です。

(「共につくる」ことは“co-production”(コ・プロダクション)と呼ばれ、とても大切にされています。)



そこは誰もに開かれており、リカバリーに向けて、「学びたいこと」を自ら選んで学ぶ場です。



今後、このブログでは、英国のリカバリーカレッジでどんな講座が開かれているか、を、かんたんに、すこしずつ、ご紹介していけたら、と考えています。



今回例として取り上げるのは、Brighton&Hove(ブライトン&ホヴ) Recovery Collegeというカレッジの、2016年夏学期の時間割です。

このカレッジの講座は、以下の4つのカテゴリーにに分けられています:

  ◇精神的困難がどんな経験なのか/どんな治療や選択肢があるのか、を理解する

  ◇人生を構築する - たとえ精神的困難があったとしても

  ◇生きていくスキルを学ぶ

  ◇(精神保健サービスの立案や実施に)参加する - あなたのリカバリーを生かして



それぞれのカテゴリーにどんな講座があるのか、あるいはまた、他のカレッジではどうなっているのか、などなど、今後順次お伝えしていけたら、と予定しています。




2016年6月1日水曜日

【マインドフルネス 実践の紹介】歩く実践

歩く実践をご紹介します:

意識的な歩行をする
【引用した本の情報】(前回と同様です)
題名  : あなたに平和が訪れる禅的生活のすすめ
著者  : ティク・ナット・ハン
訳者  : 塩原通緒
出版社 : アスペクト
発行年 : 2005年
http://www.aspect.jp/isbn/?k=4-7572-1117-1
引用部分: 30ページ~31ページを参考に一部改変


【どんなことか?】
意識的な歩行とは、自分が歩いていることを認識するだけの単純な行為です。


考え事や心配事、未来への不安過去の後悔に意識をそらされることなく、現在のこの瞬間に存在して、自分が踏み出す一歩一歩を完全に認識することです。

一歩踏み出すごとに、あなたは現在の瞬間に到達します。

それだけで現在に到達するのですから、なぜ走る必要があるでしょう?

(中略)

意識的な呼吸と意識的な歩行は、平和の実践を生活に取り入れるための具体的な方法です。

これを用いることにより、有害な感情を和らげ、意識を鎮めて集中させ、自分を現在の瞬間に戻すことができます。

その現在の瞬間にこそ真の人生はあるのです。



【具体的に何をするのか?】
道路を歩いているときも、建物の中に入るときも、部屋の端から端へと移動するだけのときも、つねに自分の足と地面との接触を認識してください。

息を吸っているあいだ、息を吐いているあいだに、自分が何歩進んでいるかを意識してください。

息を吸うときは、心の中で「吸って」とつぶやきながら歩を進めます。
息を吐くときも、「吐いて」とつぶやきながら歩を進めます。

こうした歩きながらの瞑想は、一日中いつでも実践できます。


2016年5月30日月曜日

【マインドフルネス 実践の紹介】呼吸を用いた実践

呼吸を用いた実践をご紹介します:

意識的な呼吸をする
【引用した本の情報】
題名  : あなたに平和が訪れる禅的生活のすすめ
著者  : ティク・ナット・ハン
訳者  : 塩原通緒
出版社 : アスペクト
発行年 : 2005年
http://www.aspect.jp/isbn/?k=4-7572-1117-1
引用部分: 29ページ~30ページを参考に一部改変


【どんなことか?】
意識的な呼吸とは、息を吸った時に自分の体内に空気が入ってくるのを認識し、息を吐いたときに自分の体内から空気が出ていくのを認識することです。

自分の体と空気との接触に意識が向けられた瞬間、私たちは自分の意識とも接触し、それがどういう状態にあるかを知ります。

意識的な呼吸を一回するだけで、自分自身にも、自分の周囲の世界にも触れられます。
そうした意識的な呼吸を繰り返すたびに、心身に安らぎが戻ってきます。


【具体的に何をするのか?】
意識的な呼吸を実践するために、まずは自分の呼吸の自然なリズムをつかみましょう。
無理に呼吸を長くしたり深めたりせず、ふつうに息をしてみてください。
自分の息に注意を払うと、やがて自然と呼吸が深くなります。

ときどき意識が離れそうになったらそれを見落とさず、そっと意識を呼吸に戻してください。


下記の手順に従って、注意がそがれないようにしてもいいでしょう。
何度か呼吸を繰り返すあいだ、最初から最後まで自分の息に注意を払います。
各項の最後のキーワードを使って注意を持続させましょう。
 

①息を吸って、吸った息だけを意識する。息を吐いて、吐いた息だけを意識する。
……吸って吐いて
②息を吸って、吸う息が深くなるのを意識する。息を吐いて、吐く息が深くなるのを意識する。
……深く深く
③息を吸って、吸う息がゆっくりになるのを意識する。息を吐いて、吐く息がゆっくりになるのを意識する。
……ゆっくりゆっくり


意識的な呼吸はいつでもどこでも実践できます。
座ったままでも、横たわったままでも、立ったままでも、あるいは自動車を運転しながらでも、仕事をしながらでも実践できます。

意識的な呼吸によって、どんなときにも自分のしていることに意識的になり、より集中できるようになります。

2016年5月9日月曜日

【マインドフルネス 本の紹介】“親と子どものためのマインドフルネス” 

【本の情報】
題名  : 親と子どものためのマインドフルネス
著者  : エリーン・スネル
訳者  : 出村佳子
出版社 : サンガ
発行年 : 2015年
http://www.samgha-ec.com/SHOP/300250.html

【どんな本か】
子どもとおとなが一緒に楽しみながらマインドフルネスを生活の中で実践していくアイデアが、豊富に紹介されています。

【この本を紹介するねらいは…】
ここでは、子どもや子育て中のおとなだけにお薦めする、というのではなく、すべての人々にとってのマインドフルネスへの“入り口”として、この本をご紹介したいと思います。

イメージが浮かぶようなやさしく柔らかいことばや、遊び心あふれるエクササイズなど、マインドフルネスに気軽にふれられる一冊です。


【読みかた・使いかたについての提案】
本を読む時間がないとき・読むのが苦手なかたは…
エクササイズのための音声ガイドCDが付いているので、それを聴きながら、実践してみることが可能です(CDの使いかたは… 41ページ に書かれています)。

収録内容は…
01 静かにすわろう 基本のメディテーション
02 子どものカエル 基本のメディテーション
03 呼吸に気づこう 注意をおなかに向ける
04 スパゲッティ・テスト からだのリラックス
05 ストップ・ボタン 自動的な反応をやめる
06 いやな気持ちの手あて
07 安全な場所 ビジュアライゼーション
08 悩みのベルトコンベア 思考や悩みが止まらないとき
09 思いやり
10 こころの部屋の宝物
11 ゆっくりおやすみ
(エクササイズの名前からも、この本にあふれる”楽しむ気持ち”が伝わってくるように思います。)


【印象に残ったことばの引用】
冒頭に、著者エリーン・スネルさんご自身の子育てにまつわる、印象的なエピソードが紹介されています。お嬢さんが5才のころ、なかなか寝つけなかったある晩のできごとです:

(“1 マインドフルネスってなに?” 32~33ページより)
娘はあたまのなかでいろいろなことを考えつづけ、なかなか眠れなかったのです。
もう遊んでくれないティムのこと、…

(中略)

しばらくたってから、ふと気づきました。

次から次へとあたまに浮かんでくるわずらわしい考えに注目するのをやめ、あたまからおなかへゆっくり意識を移していけば、もしかするとそのうちこころが落ち着くのではないかしら、と。

そこで、娘に、あたまからおなかへ意識をゆっくり移していくように言いました。

おなかには、考えがありません。息が出たり入ったりしているだけです。息がそっとおなかをふくらませ、そっとへこませています。静かに、おだやかに動いています。このゆったりとした動きが、娘を落ち着かせ、眠りにつかせていったのです。


これから先、また機会をあらためて、新しい投稿で、この本のところどころに散りばめられた、遊び心にみちたエクササイズをご紹介できれば、と考えています。

2016年4月15日金曜日

【マインドフルネス 本の紹介】“Full Catastrophe Living” Jon Kabat-Zinn

【本の情報】

題名  : Full Catastrophe Living (邦題:マインドフルネスストレス低減法)
著者  : Jon Kabat-Zinn(ジョン・カバットジン)
訳者  : 春木豊
出版社 : 北大路書房
発行年 : 2007年
http://www.kitaohji.com/wadai/choryu_index.html


【どんな本か】
“今”という瞬間を意識して(マインドフルに)生きていくために、生活のなかでできる実践が、豊富に紹介されています。


【この本を紹介するねらいは…】
著者のジョン・カバットジンは、“マインドフルネスストレス低減法”というプログラムの開発者として知られていますが、この記事では、“治療法として”という観点ではなく、“誰もが日常の中で自らできる実践として”という観点から、内容を紹介していきたいと考えています。


【書名にこめられた意図は?】
書名の“Full Catastrophe Living”は“やっかいごとだらけの人生”という意味あいで用られています。


著者はこの点について…

  この本では、この“やっかいごとだらけの人生”をまるごと抱きしめてしまうという方法をお話ししていきます。(8ページ)

…と述べています。


人生や生活から問題や困りごとを追い出そうと躍起になるのではなく、問題を抱えながらその中で自分たちの心と体のバランスを維持していくにはどうしたらいいか、という問う意図がこめられています。


そしてさらに、その問いに対して著者が提示する…

 必要なのは“今”という瞬間のすべてをすすんで受け入れようとする気持ちだけです(ⅹⅰページ)

…という言葉から、“今”という瞬間の豊かさへの扉が開かれていく一冊です。


【読みかたについての提案】
時間がないときや、長い文章を読むのが苦手なかたは…

以下の箇所から好きな部分を拾い読みして、自分で実践してみることも可能です。
(ひとつの項目は数ページで完結します。)


自分の心の動きを観察してみよう(36ページ)
◇「マインドフルネス瞑想」とはどのようなものか-食べる瞑想(46ページ)

呼吸法のエクササイズ(89ページ)
静座瞑想のエクササイズ(110ページ)
(呼吸と共に座る、呼吸と体の一体感を味わいながら座る、音と共に座る、心の中の思いと共に座る、あるがままの意識と共に座る)
ボディー・スキャンのエクササイズ(139ページ)
ヨーガ瞑想法のエクササイズ(ポーズの図入りです) (156ページ)
歩行瞑想の行い方(171ページ)

◇“時間の束縛”から抜け出すための四つの方法(232ページ)
◇(対人関係における)攻撃的エネルギーを親和に変える-合気道による訓練(243ページ)
仕事ストレスに対処する方法(265ページ)
(番外編)◇「九点パズル」で思考パターンを点検しよう(279ページ)

今後、また機会をあらためて、具体的な内容をご紹介できれば、と考えています。


2016年4月11日月曜日

【マインドフルネス 本の紹介】ティク・ナット・ハン “あなたに幸福が訪れる 禅的生活のこころ”

【本の情報】

題名  : あなたに幸福が訪れる 禅的生活のこころ
著者  : ティク・ナット・ハン
訳者  : 山岡万里子
出版社 : アスペクト
発行年 : 2009年
http://www.aspect.jp/isbn/?k=978-4-7572-1624-2







【どんな本か】
禅僧のティク・ナット・ハン師の著書です。

気づき(マインドフルネス)を、日常のなかに取り入れて生きていくにはどうすればよいか、そのヒントにあふれています。



【読みかたについての提案】
時間がないときや、長い文章を読むのが苦手なかたは…

 “付録A 力を培うための瞑想法”(226ページ~254ページ)

…の章の、好きな項目を拾い読みするだけでも、さまざまなアイデアにふれられます。

(ひとつの項目は数ページで完結するので、ちょっとした時間に読むことが可能です。)




この部分では、呼吸や歩行、電話応対や食事といった、日常にあふれる場面をきっかけに行える実践が紹介されています。

(“瞑想法”といっても堅苦しいものではなく、すぐに生活に取り入れられるものばかりです。

著者はその点について…

  “瞑想というと、僧侶が微動だにせず沈黙のうちに座禅を組んでいる姿を想像するかもしれませんね。

それはあくまで瞑想のひとつで、ほかにもほんの数分のあいだに楽しめて、家庭や職場で実践できる瞑想がたくさんあります。” (226ページ)

…と述べています。)



【印象に残ったことばの引用】

(“はじめに” 9ページより)
気づきとは、今この場に全身全霊で存在し、自分の内側と外側で何が起きているかを把握することです。



今後、機会をあらためて、この本で述べられている実践の具体的な内容をご紹介できれば、と考えています。


2016年4月8日金曜日

【マインドフルネス 実践の紹介】気持ちを込めた呼吸 (ティク・ナット・ハンの著書より)

出典:ティク・ナット・ハン著 山岡万里子訳 “あなたに幸福が訪れる 禅的生活のこころ”(アスペクト) (2009年)

P.227~(以下引用です)


気持ちを込めた呼吸

 気持ちを込めた呼吸を実践する上で参考にしてほしいのが次の短い詩です。

   
   吸って、吐いて
   
   深く、ゆっくり

   静かに、落ち着いて

   笑って、手放して

   今というとき、すばらしいとき

 
 最初のふたつの言葉「吸って、吐いて」とは、「息を吸うとき、私は自分が息を吸っているのを知っている。息を吐くとき、私は息を吐いていることを知っている」という意味です。

 息を吸い込むときには、ただひとつのこと、つまり吸っている息に専念します。すべての雑念を振り払い、ただただその呼吸に専念するのです。
   
 次には同様に、吐く息に専念します。

 これが最初の練習です。

 心の中で「吸って、吐いて」と言葉を繰り返せば、ずっと呼吸と意識を共にしていられます。

(引用ここまで)